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雪輪日和

(有)小国和紙生産組合のリブランディングの提案
今井理子
学科・領域
視覚デザイン学科
コース
伝達デザインコース
指導教員
山本 敦
卒業年度
2024年度

小国和紙が生産されている長岡市小国地域。

原料であるコウゾの木の栽培や和紙を作る工程には小国地域の気候が密接に関わっています。

厳しくも風情ある小国地域の気候を温度や降水量によって形を変化させる

366日の雪の結晶で表現しました。

 

あなたの記念日はどんな結晶になっているでしょうか。

遠い小国の風土に想いを馳せる。

そんな日は、雪輪日和。

 

【研究テーマ

 

(有)小国和紙生産組合のリブランディングの提案

 

【研究の目的】

リブランディングの目的

本研究はこの2つの目的を達成するために 「会社の存在意義を伝えるコミュニケーションツール」と 「小国和紙を使うきっかけを作る商品」を制作しました。

 

【制作物1:会社の存在意義を伝えるコミュニケーションツール】

リブランディングの軸 企業理念を補強する3つの軸と仕事の判断基準となるチェックポイント

まず最初に元から使用していた企業理念である「風土に生きる紙づくり」の 解釈を一致させるために補足となるキーワード(ブランディングの軸)を決め、 それを元に一貫した「小国和紙ブランド」にするための仕事の判断基準となるチェックポイントを定めました。

ロゴマーク

新しいロゴマークも3つのブランディングの軸をもとに制作しました。 和紙の原料である「コウゾの葉」と雪国の知恵から生まれた道具である「かんじき」をモチーフに取り入れることで、原料の栽培、伝統、学びのシンボルにしています。

パンフレット

Webサイト

新しいロゴマークとブランディングの軸を元にパンフレットとWebサイトも再構成しました。

 

【制作物2:小国和紙を使うきっかけを作る商品】

「雪輪日和」とは

 

コンセプト

「雪輪日和」も先述の3つのチェックポイントに当てはめてコンセプトを立案することで、一貫した「小国和紙ブランド」を形成しています。

 

仕組み

仕組み

画面左の1月〜12月の結晶は小国地域の月平均の降水量、最高気温、最低気温、日の出、日の入りの時間。 画面右の1日〜31日の結晶は、新潟県から見た月の満ち欠けを表す月齢、地球と月の距離、月の出、月の入の時間をそれぞれ角度に換算し、切れ込みの深さを決めています。

仕組み

こちらが1月から12月の結晶。降水量が多い月ほど丸みを帯びています。

仕組み

こちらが1日から31日までの結晶。新月から満月に近づくほど丸くなり、また新月に戻るごとに結晶が細くなっていきます。

仕組み

仕組み

「12ヶ月の結晶」と「31日の結晶」を組み合わせることで、うるう年を含む366日の結晶を作ることができます。

 

商品展開

商品展開

特別な記念日に使用する紙として、結婚する2人の誕生日や結婚記念日の結晶の結婚証明書や婚姻届、赤ちゃんの誕生日の結晶の命名紙や出生届のデザインを行いました。

 

【最後に】

私はこの研究をするにあたって「伝統工芸の価値を高めよう!」と立派なことを考えていたわけではありません。

そもそも伝統工芸とは昔の人のごく一般的な生活から生まれたものであり、当時の人たちにとって伝統工芸品は必ずしも今のように高価値なものではなかったはずです。

特に小国和紙は雪深い小国地域で和紙を作るしか他に選択肢がなく、必死に生きるために発展した文化です。

そんな小国和紙をリブランディングするにあたって、「1枚10万円で売ってみよう!」とか「東京の一等地にお店を出すなら?」とか全く考えなかったわけではありませんが、日常と大きくかけ離れたことを上手く小国和紙に当てはめて考えることができませんでした。

でも、逆に考えれば小国和紙は「小国地域の暮らしや日常」を体現していると言えるのではないでしょうか。

「じゃあ、小国地域のことを未来に伝える会社にしよう!」と思って制作したのが「会社の存在意義を伝えるコミュニケーションツール」であり、「雪輪日和」です。

私の研究や展示を見て、小国和紙や小国地域がその人の記憶の片隅で生き続けることができたら、この研究をして良かったと心から思います。

 

「風土に生きる紙づくり」

(有)小国和紙生産組合を今後とも、どうぞよろしくお願いします。