旅するヘアターバン

1.研究のはじまり
2020年、私が大学1年生の時から新型コロナウイルスが流行し、未来に対する不安がありました。誰かにこの気持ちを共有したいと思い、対話を通して自分について徹底的に考える合宿に参加しました。そして、自分のありたい姿でこれからどのように社会と関わろうかという問いが生まれました。
2.使われなくなったものの関わりやすさ
私は、瀬戸内海に浮かぶ大崎下島久比でブリコラージュのワークショップに参加しました。古民家にあるガラクタを組み合わせて作品を作り、他者と作品を交換し作り変え、最後に他者と作品について会話をするという内容でした。このワークショップを通して、使われなくなったものは物語が宿っていることを実感しました。そして、傷や汚れなどがあり、完璧ではないからこそ他者が関与しやすく、使われなくなったものは、自分と他者の関わりを生むツールになり得るのではないかと考えました。
3.使われなくなった布との出会い
私は、長岡市摂田屋にある機那サフラン酒本舗主屋にて埃だらけの布と出会いました。布を丁寧に手洗いします。そして、ヘアターバンを制作しました。ヘアターバンにした理由は、私がヘアターバン好きであり、布は軽く持ち運びしやすいため、旅好きの私と相性が良いと考えたからです。制作したヘアターバンを祖母に着けてもらうと自然と笑顔になった経験から、ヘアターバンをコミュニケーションツールとすることにしました。
研究の目的は、使われなくなった布をコミュニケーションツールとして私が他者と関われるかを確かめます。具体的にはアップサイクルヘアターバンを通じて、他者とコミュニケーションを取ります。
4.研究方法
旅するヘアターバンワークショップを通して人と関わります。手順は以下の通りです。
①使われなくなった布を利用し、ヘアターバンを制作する。
空き家などから使われなくなった布を引き取ります。研究では主に、機那サフラン酒本舗主屋にあった古布、SNSで呼びかけて提供してもらった着物の端切れ、ラオスシェンクアン県でのプロジェクトで出た伝統的な巻きスカートを使用しました。
②人にヘアターバンを着けてもらう
私が他者にヘアターバンの着け方を教え、身に着けてもらいます。
③着けた様子の写真を撮る。
他者がヘアターバンを着けた様子の写真を撮影します。気に入ったヘアターバンがあれば無料で引き取ってもらいます。
4.結果
旅するヘアターバンの活動を通して95人の他者と関わり、笑顔にすることができました。そのうち75名はヘアターバンを受け取りました。アップサイクルのヘアターバンは私と他者、地域と関わるコミュニケーションツールとなりました。
この活動を通して、私の心はとても豊かになりました。それは旅するヘアターバンワークショップ後に他者が私と関わろうとしてくれた人がいたからです。
私の活動を知って家にある使われなくなった布を提供してくれた人、感謝の気持ちを表してマフィンをくれた人、「環境に貢献してくれる人がいて嬉しい。」と言ってくれた人などがいました。ラオスシェンクアン県では、現地の人たちがヘアターバンの作り方に興味を示してくれて、ヘアターバンの作り方を教えるワークショップも実施することができました。現地語のラオ語が分からなくてもコミュニケーションを取ることができました。
5.おわりに
活動を始めたころは、「他者と関わりたい」という思いがありましたが、他者が私と関わろうとしてくれたことで、私自身にとても心の豊かさを感じました。
これからもゆっくりと旅するヘアターバンの活動を続けていけたらと考えています。
私と関わることで、少しでも笑顔になって元気になってくれる人がいてくれたら嬉しいです。
本研究で私と関わってくれたすべての方々に、心から感謝いたします。ぜひ、布と共に思い出を刻んでください。
みなさんの笑顔はとても輝いていて、私を幸せな気持ちにしてくれました。また、どこかで会えますように。