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しわ

宮永まなか
学科・領域
視覚デザイン学科
指導教員
阿部 充夫
卒業年度
2025年度

本作品は、「しわ」を通して家族のつながりや、個人が歩んできた時間の重なりを可視化することを目的としている。一般的に、しわは老いの象徴として捉えられやすいが、私はそれを「人生を刻んだ愛おしい証」であり、「家族の歴史を映し出す線」として捉えている。人は深く刻まれたしわに目を向けがちだが、しわは一本だけで存在しているわけではなく、深いしわも周囲の細かな線も、すべてが重なり合いながら、その人が歩んできた時間を形づくっている。目立つしわと、見過ごされがちなほど浅いしわのどちらも等しく人生の痕跡であり、そこに優劣はない。そうしたしわを愛おしく感じることは、自然な老いを受け入れ、完璧ではないものの中に美しさを見出す態度でもある。

また、しわにはDNAの記憶が現れることがある。笑ったときの表情やしわの位置が家族と似ていると感じた瞬間、血縁のつながりを実感する。しかし、しわは単に遺伝だけによって形づくられるものではなく、同じDNAを持っていても、置かれた環境や選んできた道、生き方の違いによって刻まれる模様は異なる。それは、個々の人生の軌跡と、家族という集合的な記憶が交差する中で、唯一無二のしわが生まれていくことを意味している。私が特に関心を持っているのは、しわが個人の生き方だけでなく、家族との関係性や育ち方によっても形づくられる点である。共に過ごした時間や支え合ってきた日々の積み重ねが、表情や姿勢、そしてしわとして身体に刻まれていくと考えている。

しわを撮り続ける中で、それが単なる老いの痕跡ではなく、家族の温もりやつながりを感じさせる存在であることを実感してきた。だからこそ本作品では、しわを肯定的に見つめ、「生きてきた時間を愛おしむまなざし」を表現している。また、「しわ」をあえてひらがなで表記することで、時間の流れや記憶の重なりを、よりやわらかく表現できると考えた。しわの持つ多層的な意味を視覚化することで、鑑賞者に「家族のつながりとは何か」「自分の人生に刻まれてきたものは何か」を問い直すきっかけとなる表現を目指している。しわは、時間の経過を示す線であると同時に、生きてきた証を祝福する線でもある。私はこの作品を通して、「老いること」を否定ではなく、人生を重ねることの美しさとして捉え直すきっかけを生み出したいと考えている。