MENU

旋律が滲むとき

クラシック音楽の曲調を可視化する染色表現の研究
川邊捺未
学科・領域
プロダクトデザイン学科
コース
テキスタイル・ファッションデザインコース
指導教員
鈴木均治
卒業年度
2025年度

▲ 一番左から順に、カノン、アラベスク、ノクターン、愛の夢

▲ 各曲のキャプション 本サイトに掲載している音源は、Wikimedia Commonsにて公開されている
パブリックドメイン、またはCreative Commonsライセンスの音源を使用しています。
各音源の利用条件に基づき掲載しています。

演奏会開演前に来場者が過ごすコンサートホールのホワイエを展示空間と想定し、
4枚の布作品を天井から吊るす形式で構成しました。
来場者が歩行する中で自然と作品が視界に入り、
視覚から曲の雰囲気を受け取ることで、
「きれいだな」「この曲を聴いてみたい」と感じ、
自然と音楽への興味が生まれる体験を目指しています。

本研究では、具体的なモチーフではなく、
線の反復や広がり、リズム感を軸とした
線による抽象表現を用いています。

線は、音楽と同じように、
時間の中で流れ、揺らぎ、重なりながら展開する要素です。
本作品は、私自身の音楽のイメージを一義的に伝えるものではなく、
来場者がそれぞれの感覚で
「なんとなく、こんな音楽かな」と
直感的に曲調を想像できることを重視しました。

制作では、引き染めによって布全体に色を施した後、
脱色を用いたシルクスクリーンを重ねることで、
白く抜けた部分の表情の違いを生み出しています。
この偶然性を含んだ表情が、
音の広がりや、音楽の持つ揺らぎと重なると考えました。

カノン
同じ旋律が一定の構造の中で繰り返される曲であることから、
模様のリピートと、同質の線が一点から反復的に増えていく構成としました。

アラベスク第1番
旋律が揺れ動き、流れるように展開していく曲調から、
曲線的な線を重ね、浮遊感のある広がりを表しています。

ノクターン Op.9-2
繊細な旋律が静かに流れ、余韻を残しながら消えていく曲であることから、
今にも消えそうな細い線を用い、余韻を意識しました。

愛の夢 第3番
感情の高まりと落ち着きが行き来する曲であることから、
線の太さや濃淡、滲みの変化でその起伏を表しています。

本研究は、クラシック音楽の曲調を
染色による抽象表現として可視化し、
演奏会開演前のホワイエにおいて提示する試みです。
視覚から曲調に触れる体験を通して、
来場者が音楽に対して能動的な関心を持つ、
その「入り口」をつくることを目的としました。