Inorganic Lifeー無機の生命

研究テーマ「無機物にプロジェクションマッピングを用いて映像を投影し、鑑賞者に“生命の気配”や“感情の存在”を感じさせる表現手法の研究」
無機物に命や感情は存在しないのかー
それを証明する手段は、現在の私たちには存在しない。
本研究では、「無機物にも命がある」と仮定し、その仮想的な生命の姿を映像表現を通して描き出すことを試みた。
命とは何か、感情とは何か。その定義は未だ明確ではなく、人間の主観や経験に委ねられている。生命は科学的な指標によって説明される一方で、感覚や直感といった、数値化できない領域にも深く関わっている存在である。
私たちは日常の中で、風に揺れるカーテンや、静かに光を反射するガラスのコップ、あるいは長年使い込まれた道具に対して、ふと「生きている」かのような気配や温度を感じ取ることがある。
それらは物理的には生命活動を持たない無機物であるにもかかわらず、あたかも命が宿っているかのように知覚される瞬間がある。
無機物には本来、命も感情も存在しないとされている。
しかし、映像という表現を通して無機物に、光や動き、周期的な変化、わずかな揺らぎを与えることで、鑑賞者自身の記憶や感情が重なり合い、それぞれ異なる「生命の気配」が立ち上がる。
命は対象に内在するものなのか、それとも見る側の心の中に立ち上がるものなのか。
本作は、その曖昧で主観的な感覚にそっと焦点を当て、無機と生命の境界を問い直す。




作品タイトル「Inorganic Life ― 無機の生命」
「Inorganic」とは「無機物」という意味であり、本来生命を持たないはずの無機物、その「無機物」の「生命」という一見矛盾した組み合わせによって、生命とは果たしてどのように存在するのかということを問い直す。
本作品は、無機物と生命のあいだに揺らぐ、曖昧な境界を、映像表現によってそっとすくい取ることを試みたインスタレーションである。

