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春は箱の中

私の葬式と記憶の視覚化の研究
遊佐茉奈
かきく
学科・領域
視覚デザイン学科
コース
表現デザインコース
指導教員
御法川 哲郎
卒業年度
2021年度


昔から色んなことを抱え込む性格で、高校時代に区切りがなくただ過ぎていく人生が嫌になりました。そのあたりから「卒業したら全部終わりにしたい、そのために時間を使いたい」と思うようになりました。大学に入学する際、「今度こそ卒業したら一回自分の人生に区切りをつける、そのためにやり残したことを全部やる」と思ったことがこの研究を行うきっかけでした。

葬式というのは、人の死を受け入れ、心の中で区切りをつける式であると考えています。私が使った4年間の記憶を視覚化し、その記憶と共に葬式を行うことでこの大学生活に区切りをつけようと思い、オブジェクト・写真・音楽・映像・言葉といった様々なアプローチで記憶を視覚化し、葬式をテーマにしたインスタレーションを制作しました。

この4年間、言葉にできる記憶もあれば言語化できないぐちゃぐちゃした行き場のない気持ちを抱えたことが多くありました。その記憶をただ忘れてしまうのではなく、オブジェクトや写真、映像などといった媒体で視覚化し、形に残しました。そして私と似たような気持ちを持つ後輩や、何かものを作る人へ「その行き場のない記憶を形にして残す」ことで自己を振り返るきっかけや生きるヒントを与えられたら嬉しいです。


研究の概要
私と、私の記憶を視覚化し、閉じ込めた空間で葬式を行うことでこれまでの人生に区切りをつける。

目的
自分が4年間生きた記憶を残す。思考を見せることによって同じ気持ちを抱えている人に自己を振り返り、生きるヒントを与える

制作物
オブジェクト・言葉・写真・映像・音楽

使用画材・ソフト
発泡ウレタンフォーム・漂白剤・ジェッソ・スプレー・Illustrator・Photoshop・Procreate・GarageBand

研究のプロセス


作品解説

01. オブジェクト

これらは、言葉にできなかった感情の記憶が視覚化されたオブジェクトです。葬式に合わせて、遺骨をモチーフにしたデザインにしました。

02. 言葉


2019年〜今まで残していたブログやネットに書いていた文章を抜粋、またはそこから文章を再構築したものを展示しています。私なりの口調にすることでどういうことを考えていたのか、何が悩みだったのかを具体的に伝えています。オブジェクトと照らし合わせて、解釈を結びつけることができます。

03. 写真

大学に入学してから撮り溜めていた写真を漂白させることで記憶が風化していくことを表現しています。また、色褪せさせることで時間の経過を表しています。

04.音楽


私の一番濃い時間を過ごした場所の曲と映像を作りました。私のことを知らない人でも、この映像を見て何となくでもいいのでこんなふうにこの人は時間を使ったんだな、と思っていただけたら嬉しいです。


まとめ
これまでやりたかったこと、これだけは絶対に学生のうちにやりたい、と思っていたことが全て達成できました。また、この作品を作ったことがきっかけで自分自身の創作活動の幅が広くなりました。
デザインとは何か、私は大衆が幸せになるものだけではなく、ごく狭い、特定の誰かに向けるものがあってもいいと思います。
私のように色んなものを抱え込んでしまう人がこの展示を見て、その抱えている気持ちや記憶はどんな形にもなる、ということを知ってほしいです。そしてその気づきが思考に何らかの影響を与えたり、生きるヒントになってくれたら嬉しいです。