手の特性を活かした人物表現
「肖像 或る人」
学科・領域
美術・工芸学科
指導教員
小林 花子
卒業年度
2021年度
私は母の手が好きだ。女性らしいしなやかな手ではないが、これまでの経験、苦労が蓄積された、母という人間を明瞭に表したような手である。手はその人の人となりを表しているのではないかと感じて以来、私は人の手を見ることが好きになった。 「手」は、年齢、性別などによって様々な個性を持つものであり、人間の感情を豊かに表してくれる部分でもある。手の表情からどれだけ人物を表現できるかということに関心を持ち、この研究を行った。
本作品は木彫で制作した。木は、正しい向きから彫らないとささくれたり割れたりしてしまうことがある。そのようなデリケートなところが人間の内面にある繊細さに似ていると感じている。また、人間の生活の中から感じられる優しいあたたかさを、木の自然な色合い、柔らかさを感じさせる手触りと重ね合わせて表現できるのではないかと考えた。
本作はイチョウで制作している。イチョウは私が 3 年次に出会った木材である。柔らかいため比較的スムーズに彫ることができ、木を削いでいく感覚がとても気持ちがいい。また、杢目の主張がそれほど強くなく、色味も薄い暖色である。作品が出来上がった時に柔らかい印象になるのも大きな魅力であった。
展示空間は、5 人の人物一人ひとりが本を読んでいる場面を想像できるように配慮した。展示台は、それぞれの人物が本を読んでいる空間に見立てて高さを変えている。作品同士の距離を空けることにより、一人ひとりが別の場面におり、それぞれの時間を過ごしていることを表現した。
素 材:イチョウ
作品サイズ:H15cm×W40cm×D39cm 他
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