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還る場所

鋳金技法による椅子の制作
佐藤友香
学科・領域
美術・工芸学科
コース
クラフトデザインコース
指導教員
長谷川 克義
卒業年度
2022年度




 見るだけではなく実際に触れることで気持ちを少し良いものに変えるような作品を作りたいと考え、身体だけではなく心も癒してくれる「座る」という動作に着目し、その動作に関係が深い道具の一つである椅子を制作することにしました。

 私にとっての椅子の存在と同じように、落ち着けて自分の居場所のように感じられる風景を椅子のデザインに取り入れたいと考え、自分の出身地の新潟県に馴染み深い風景の一つである田んぼをモチーフに選択しました。
 田んぼはいつも自分の身近に存在し、そんな田んぼを様々な場面で見ると心から安心します。田んぼは四季折々繰り返し姿を変化させ私の目を楽しませてくれます。見慣れた風景のはずなのにいつもどこか新鮮な気持ちでその美しさに感動し、この地で生きる自分を励まし温かく包み込みます。

 忙しない日常の中でそんな田んぼに座り、ひと時のくつろぎを味わえたらと思い、鋳肌独特な繊細な表情と風合いで田んぼの心落ち着く情景を表現しながら、鋳物の物量と重さを活かした人をしっかりと支える椅子の制作を目的とし実現させました。

 椅子の形状については、単体で田んぼを表現するのではなく、田んぼを取り囲む山や森などの周りの自然環境も取り込んだ形にしています。座面部は水の張った田んぼの水面をイメージし側面や脚の部分は、地面から伸びる木や岩肌を表し、そこに苔やツル科の植物のようなものが這い伸びているような形を抽象化させ、生命の息吹や季節の移ろいを表現しました。








 サイズ:W350×D480×H410mm
 技法:蠟型石膏埋没鋳造
 素材:真鍮