SUMON

失われていく地域の名前
-守るために私ができること-
平成の市町村合併とその弊害
平成11年以降、人口減少や少子高齢化の影響により、生活における基礎自治体の行政・財政基盤の確保のために市町村の統廃合が全国各地で行われた。平成の合併と呼ばれるその政策は合併後の行財政基盤強化やサービスの充実化をもたらした一方で、それに伴い村や町の名称がなくなり、その地域の文化や伝統までもが存続の危機にさらされる結果となった。総務省が公表した「『平成の合併』について」においても「合併による主な問題点・課題」として「旧市町村地域の伝統・文化、歴史的な地名などの喪失」が挙げられており、そのために伝統・文化に関しては資料のデータベース化や支援・保護、旧地名に関しては施設名や地区名としての保存など対策が行われている。福井県のおおい町、大分県の大分市など日本各地で取り組まれている。
新潟県魚沼市守門地域について
新潟県魚沼市守門地域は、かつては守門村と呼ばれる村であり、自然が豊かな小さな村であった。守に門と書いて「すもん」という特殊な読み方をし、「しゅもん」や「まもるもん」など正しく読まれない場合もある。 しかし魚沼市となって以降、守門の名を呼ばれることは減った。守門地域唯一の中学校であった魚沼市立守門中学校は魚沼市立入広瀬中学校との合併にともない魚沼市立魚沼北中学校となり、守門村役場(守門庁舎)は魚沼市役所北部庁舎となるなど守門という名前が施設名からも少しずつ消えている。 自身が生まれ育った土地の名前が変わり、少しずつ失われていくことに寂しさを感じることは当然である。こういった事態に、私に出来ることは一体なんであろうか。これが本研究の目的である。
守門地域での地域活性化の例
現在行われている地域活性化の例として「元気すもんプロジェクト」というものがある。「自分が本気でこの地域を元気にしたい」と考える人々で結成された「元気すもんプロジェクトチーム」が行っている活動。取り組みの一つである地域交流の場・直売所元気すもんは令和元年に正式オープンした施設であり、春〜秋にかけて様々なイベントを行っている。店内では守門地域で生産・製造された商品が数多く並び、食事やお弁当を楽しむことができる。元気すもんプロジェクトチームの活動内容とは異なる方法でのアプローチをできないかと考えた。
デザインから始める地域復興
デザインを通した地域復興の例としてアメリカ合衆国ニューヨーク州の観光キャンペーン 「I Love NewYork」というものがある。1960年代後半から70年代半ばのニューヨークは、犯罪率が非常に高く街も荒れ果てており財政破綻の危機にも陥っていた。この状況を解決するため、州は観光での財政の立て直しを図った。グラフィックデザイナーのミルトン・グレイザーがデザインした『I❤️NY』のロゴは大変有名である。このロゴを用いたグッズはニューヨークの定番土産となっている。『I ❤️JAPAN』などのパロディも盛んである。この事例を参考に守門地域の名称保存、地域復興のための提案を行なっていく。
SUMON -Beautiful nature Warm hearted-
地域の名称保存・地域復興の手段としてロゴデザインを主軸とした地域ブランディングを提案する。本提案はメインとなるロゴデザインを分解・展開して様々な場面で用いることで守門という名前の知名度と意識の向上を図るというものである。観光客向け、地域住民向けの2軸と「TOURISM DESIGN」「PUBLIC DESIGN」「GOODS DESIGN」の3種類のデザイン展開を行った。
TOURISM DESIGN
守門地域を訪れた観光客向けのデザイン展開である。観光ポスターでは守門地域の美しい自然をPRし、パンフレットとコレクションカードでは守門地域の見どころを記念のカードを集めながら楽しむことができる。
PUBLIC DESIGN
守門地域に住む人々に、より守門地域を意識してもらうためのデザイン展開である。街灯やガードパイプ、マンホールなどの地域全体に関わるものから消火器置き場や婚姻届など個人に関わるものまで様々な場面で守門を感じてもらうことができる。
GOODS DESIGN
観光客にも地域住民にも、守門を手軽に身近に感じてもらうためのデザイン展開である。缶バッジやアクリルキーホルダーは地域住民向け要素が強いが、トートバッグやコースターなどはどちらのユーザーにも手にとってもらいやすい。
展示風景