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色で見る文字

共感覚の視覚化
五十嵐菜水
学科・領域
視覚デザイン学科
コース
伝達デザインコース
指導教員
吉川 賢一郎
卒業年度
2024年度

共感覚とは、文字や音などの情報を頭の中で処理しているときに、その情報が一般的な形で処理される (例:音が音として認識される) ことに加えて、一般的にはそれと無関係と考えられるような種類の感覚や認知処理まで引き起こされる (例:音を聴いた時に色の印象を覚える) というもので、人口の数%程度の人が持つと考えられている認知特性 (情報処理の特性) です。
共感覚にもさまざまなタイプがあり、先に例に挙げた音に色を感じるもののほか、数字に人格を感じるもの、数字が三次元的に配置されているように感じるものなど、人それぞれ異なる形で現れます。

今回の研究では、この共感覚を可視化し、伝達する手段をテーマとしました。

私は、ひらがな五十音すべてに色の印象を感じる「文字と色の共感覚」を持っています。
私自身の共感覚に基づいて制作したこの作品は、文字の認識と色の認識を同時に体験することで、鑑賞する人に文字と色の共感覚に近い体験をもたらすことを目的としています。
作中に引用されているのは北原白秋の「あめんぼのうた」の一節です。この詩から続く「あいうえお」の音を思い起こしながらご覧ください。

「文字を見る」という行為一つをとっても、ある人は同時に色を感じ、隣にいる人は何も感じない。それぞれが、その人にとっては当たり前のこととして存在しています。すぐ隣にいる人が必ずしも自分と同じように世界を認知しているとは限りません。

この作品を通じて、共感覚というきわめて個人的な現象に触れることで「自分と他人は世界を同じように見ているとは限らない」という認知の多様性を体感していただければ幸いです。この作品から得た気づきが、千差万別である人間同士のコミュニケーションの在り方や相互理解を深めるきっかけとなることを願っています。