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過疎地域における〈引力〉及びその生成・変容に関する研究

新潟県上越市牧区岩神を対象に
佐藤香菜恵
学科・領域
建築・環境デザイン学科
コース
建築・インテリアコース
指導教員
北 雄介
卒業年度
2025年度

 私は、地元である新潟県上越市牧区岩神を対象とし、過疎地域における〈引力〉に関する研究をしてきました。この研究を進めるにあたり、家族をはじめとした岩神の住人の皆さまに様々なご協力を賜りました。心から感謝しています。

■はじめに
 〈引力〉は、土地に人を引き寄せ、留まらせる力のことである。
 都市には職場や学校の選択肢の多さや便利さから、地方から人が集まっています。都市には〈引力〉があると言える。これは都市の持つ一方的な力なのだろうか。それでも、衰退した地域でも行事や営みがあるということは、そこにも〈引力〉があるということなのだろう。では、過疎地域にはどのような力が働いているのだろうか。

■〈引力〉の範囲とは?
 集落内の世帯構成、家族内の往来の頻度を調査し図に表した。
 岩神集落内の世帯数は24、住人は54名。それに比較し、「よく来る人」「たまに来る人」を合わせると87名おり、住人の数だけでは測れない人との関わりがあることが分かる。
 また、祭りなどの行事や住人の生活が、集落外の家族に支えられている面があり、集落外にも〈引力〉の範囲が及んでいることがわかった。

■どのような〈引力〉が働いているのか―引力実態調査―
 岩神に働く〈引力〉は、〈愛着的引力〉と〈義務的引力〉の2種類があるのではないかと仮説をたてた。
 この仮説を軸とし、住民を対象としてアンケート調査及びヒアリング調査を実施した。
 結果から以下のものが〈引力〉を持ちうるとわかった。

・集まれる場所や行事
 祭りや、開催する神社と公会堂は、特に思い出の項目に上がり、〈愛着的引力〉を持っていた。住人だけではなく、集落外の家族も集まる行事であるため、遠くから人を引き寄せる力があると言える。愛着がある一方で、「管理」や「継続」「運営」に義務感や責任感が生じていた。

・田畑
 田んぼのある景色に愛着を感じ、なくなってほしくないと思う一方で、管理には義務感が生じていた。耕作放棄地が景観を悪くするのを防ぎたい一方で、人が足りずすべての土地は管理しきれないという現状がある。

・家
 居住理由として「家があるから」が最も多く、家という居場所が人をとどめ、集落外から来る家族の立ち寄る場となっている。家族の思い出の地でもある一方で、「家じまい」を視野に入れている人がおり、自身の代で家を処分し更地にすると考えていた。
 家がなくなれば、集落外の家族の立ち寄る場がなくなり、往来は減るだろう。

・家族
 親や兄弟の体調の悪化で出戻りをする人がいたり、結婚を機に集落に来たりと、家族の存在は〈引力〉を持ちうるものである。逆に、家族がいなくなることで集落にいる理由がなくなり出ていく人がいたりと、強さの変わりやすい〈引力〉であると言える。

以上から、〈引力〉は土地が常に持つ強大な力なのではなく、家族の変化や暮らし、環境の変化に伴い、〈引力〉の強さも変化するものだとわかった。

■どのように生まれ、変容するのか―時系列引力図―
 〈引力〉は、土地が持つものではなく、土地の中で行われる人の営みや人の繋がりの中で生まれるものだということが分かった。では、どのように生成、変容していくのだろうか。世帯構成調査の図と、引力実態調査の人生年表とその他ヒアリング項目を掛け合わせ、時系列での〈引力〉の移り変わりを図にまとめた。
 
 ・幼少期の思い出が現在の愛着につながっている

 ・最後は家族という〈引力〉が残ることが多い 

 ・時間の経過で義務感が増える
  ➡時間の経過とともに集落の過疎化が進み、一人一人の負担が増える。担っていくぞという責任感や負担による義務感が増えるのではないだろうか。また、〈愛着的引力〉が〈義務的引力〉に変わっているのではないだろうか。

 また、「雪」が、将来への不安や出ていく理由として挙げられた。積雪が不安なのではなく、雪を乗り越える力や働き手が不足していることが、不安につながっている。過疎化・高齢化の影響が見られ、〈引力〉と反対に土地から人を遠ざける〈斥力〉が働いているのだと考えられる。

時系列引力図

パネル