ニュー・アイ・グラフィックス
私は元々ポストモダンやメンフィスのような80年代デザインに魅力を感じていた。それはポストモダンのような非機能的で個性的な装飾を持つデザインには目が覚めるような刺激を感じるものがあり、現代に無いものだったからだ。
この一年で、社会の情勢とデザインは比例するものだと改めて考えさせられた。
80年代は経済が潤い、多様性に富んだ時代でいかに充実していたかが伺える。
『世の中全体が浮かれていたバブルの時代。サッチャリズム、レーガノミックスが台頭し、「小さな政府」を標榜する新自由主義経済への道が開かれた時代。コピーライターが時代の寵児としてもてはやされ、広告文化が開花した時代。雑誌文化が興隆をきわめ、メディアが教えるスポットに若者たちが群がったマニュアル文化の時代。マンガやアニメが「子ども文化」の枠から離脱し、家庭用ゲーム機という新ジャンルが誕生したサブカルチャーの時代。構造主義やポスト構造主義に関心が集まり、ポストモダンやニューアカ(ニューアカデミズム)といった言葉が流布し、現代思想がオシャレに感じられた時代。』
引用先:斎藤美奈子/成田龍一編著 「1980年代」
80年代デザインとは対極に現代のほとんどは情報を早く取り入れられるような無難でシンプルだったり品を無視してとにかく情報を詰め込んだようなデザインが好まれている傾向にある。利便性、機能性を重点におかれていることに私は社会全体がどこか生き急いでいるような感覚があった。また新型ウイルスの感染拡大時で身動きが取れなくなり、生活に趣がなくなり人々の目が曇っているような生活が続くようになった。
キャラクターデザインやポートレート撮影など制作での経験から、目は印象やクオリティを左右する特別な器官だと思う。目とはいわば、その持ち主の象徴を表していると考えている。そこから私はその年によるデザインの雰囲気がその年の人の目の色を表していると自己解釈した。
そこで現代とは対照的なポストモダンを参考にして、刺激と元気を与えるような目をモチーフにした幾何学グラフィック制作を試み、全100シリーズの作品が生まれた。
私はこの作品を原点に、視覚の曇りを拭うような、人に元気を与えるような鮮やかな作品制作を続けていきたい。
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