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優しい記憶たち

天田初那
学科・領域
視覚デザイン学科
コース
表現デザインコース
指導教員
松本 明彦
卒業年度
2022年度

優しい記憶たち、何処にも行かないで。
私を守ってくれていたのは、あなたたちでした。

今では遠くにある、小さな頃からすっかり慣れ親しんだ地元の景色を思い浮かべてみました。
その景色は、いつも私を安心させてくれます。
とても素敵な景色だけれど、思い浮かべてみると何処か鮮明ではなくて、
それでいて優しく温かな印象だけははっきりと感じます。
心に留まる景色は、ぼんやりとしか思い出せなかったとしても印象だけは強く残るのだと気付きました。

自分を優しさで包んでくれる景色は日常の中にたくさん隠れていて、知らないうちに心惹かれています。
景色を眺める瞬間が過去になっていくことで生まれる優しい記憶たち。

この作品は、心に留まる景色の中でも良い印象を持った景色に焦点を当てた、記憶内の景色の記録です。
ここで言う良い印象を持った景色とは、慣れ親しんだ遠い地元の景色を思い浮かべる時のような、
安心感やノスタルジックさを感じる景色を指します。
そのような景色を、写真を使って表しました。
実際に見た景色の原型を留めていなくても、その景色を見た時の印象が表れていれば立派な写真と捉え、
元の写真とは大きく異なった、写真と絵画を組み合わせたような写真作品となっています。
写真作品と共に、撮影した時の心情も綴りました。

優しい記憶たちが、これからも私の中で生き続けますように。

四年前越してきたこの地も、遠出した後戻ってくると安心する。
地元程ではないけれどそういう場所になってきた気がします。

冬の終わり、せっかく世界は芽吹き始めたところなのに
私だけが冬に取り残されているみたいでした。
それでも自分を寂しくさせないように、お部屋に黄色いチューリップを飾ってみました。
穏やかは、自分で作るものでした。

長岡に来てから、夕方が楽しくなりました。
陽が沈む直前に海へ行き、陽が沈むまで景色を眺めたり写真を撮ったりして過ごす。
地元にはなかった、この街の素敵な楽しみ方です。

去年の夏、親子連れしか乗っていない可愛いトレインに乗ったら、私の中に童心が戻ってきました。
子供の頃の純真さが、荒波の世に負けてしまわないように、たまにこうして思い出すのです。

夏の終わり。夏との別れを惜しむように、浜辺でラムネを飲みました。
秋になれば、夏はノスタルジックな思い出になってゆきます。

せっかく夜更かしをするのなら、素敵な夜にしたいです。
コンビニに甘い物を買いに行くのでも良いし、自然と眠気が来るまで好きな人と喋っていても良い。
夜は心地よい時間を過ごすためにあるのだから。

人生最後の夏休みに撮った夕暮れ。
夏休みらしいことを全部しようと決めたけれど、全部やるには夏はあまりにも短すぎました。

悩み事が絶えなかったあの頃。
でも今抱えている悩みたちに比べたらとっても小さなもののように感じて、
あの頃に戻りたいと思ってしまう時もあります。
いつもでも合理的でいるなんて、難しい。

息が詰まった時は気心の知れた人と海へ行って、なんでもない話をしたり、直感のままに写真を撮ったりします。心が泥で汚れてしまいそうな時、私を助けてくれるのです。

ゆっくりコーヒーを飲む時間だけは、自分に都合の良いことばかり考えて良いのだと教えてもらいました。

<展示風景>