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CLT建築の造形研究

Cross Laminated Timber による最先端木造建築の可能性
宇佐美彰翔
学科・領域
修士課程 建築・環境デザイン領域
指導教員
山下 秀之
卒業年度
2022年度


CLTとは

 「CLT」とはCross Laminated Timber(木製の直行集成板)の略称である。ひき板(ラミナ)を集積・接着することで、大判の木製パネルが製造される。1990年代初頭にドイツとオーストリアで最初に開発された。CLTの特徴は、各層ごとに、ひき板の繊維方向が直角に交わるよう、積層する点にある。優れた面剛性を有し、鉛直力と水平力の、両方を負担できることから、耐力壁としての利用も期待できる。高い耐震性能を有し、木造であるにもかかわらず、中・大規模建築へ利用が期待されている。

研究背景
 気候変動を背景に、炭素固定のため、「木造建築」が世界的に見直されている。CLTが、既に普及しているヨーロッパでは、オーソドックスなCLT建築をはじめとし、エキセントリックなCLT建築も、次々と実現している。
 その一方で、日本では、普及が遅れている。CLTを活用した竣工件数は、2021年度でも160件しかない。他構造に、対抗できるような、選択肢になっていないことが理由である。「新しいものを拒む日本人気質」、「木材流通の既得権益」、「CLTの高コスト」、これらが大きな壁になっている。

研究目的
 「CLT建築」の造形面に着目し、その有用性と可能性を明らかにすること。

研究方法
 以下の3つの研究方法をとる
・国内外の「CLT建築」の造形を分類・整理する
・既存のRC造やS造の建築を「CLT造」に置き換える有用性を検討する
・「CLT建築」を造形面に着目して設計提案する

論文構成
 本論文は2部構成とする。

第1部 現存する国内外の「CLT建築」の造形について
第2部 「CLT建築」の応用的な設計提案

4つの応用的な設計提案
 「CLT 建築」を造形に着目して提案・設計する。第1部の造形分類に基づき、4つの「CLT 建築」の設計提案を行った。4つの「CLT 建築」の設計提案を通して、革新的な造形での「CLT 建築」の可能性を見出した。机上の空論とならないよう、詳細図等の細部まで計画した。

1. 住宅(格子組造形)
 「在来造形」とは異なる、新たな造形でのユニット化した架構を検討した、住宅の設計提案した。
住宅(格子組造形)

2. 集合住宅(在来造形)
 CLT 建築の基本である、「在来造形」を用いた基本に忠実で無理のない設計提案をした。
集合住宅(在来造形)

3. こども園(折板造形)
 当初RC 造で計画していた曲面壁構造を、CLT 造へ置き換え設計提案した。
こども園(折板造形)

4. 高齢者福祉施設(折板造形)
 規格化した「折板造形」を用いることを前提に、中層大規模建築を設計提案した。
高齢者福祉施設(折板造形)