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防災ニートの災害対応能力を向上させるアクティビティに関する研究

車中泊で生じる問題に対する解決姿勢に着目して
関戸彩奈
学科・領域
建築・環境デザイン学科
コース
環境計画・保存コース
指導教員
福本 塁
卒業年度
2022年度

研究の背景と目的

 皆さんは防災や防災訓練と聞くとどのようなイメージを持ちますか?私は正直にいうと、ピンとくるものがありません。災害が発生した時はもちろん生き残りたいと思いますが、防災訓練に参加しようとする発想がありませんでした。


 こんな私のように、防災に対する知識がなく訓練も受けていない、防災意識が低い人が他にもたくさんいるのではないでしょうか。本研究では、そんな防災意識が低い人たちのことを防災ニートと名付けました。

 この防災ニートたちは防災訓練への意識はゼロですが、楽しいことや好きなことには自発的に参加することが多くあります。私自身の体験を振り返ってみても防災訓練から得られたものはほとんど思い出せませんが、山登りや車中泊などを行った際の記憶は鮮明に思い出すことができます。そんな楽しい記憶を振り返っている時に、楽しいアクティビティを行った際に、災害時に役立てることのできる要素があるかもしれないと気づきました。

 そこで防災ニートが災害時にも生き残ることができるたように、楽しいと感じるアクティビティの中に、災害時に生き抜く力を養える要素を埋め込んでしまえばいいと着想し、本研究に至りました。

 

既往研究とプレ調査

 防災として必要な要素を考えるために、東日本大震災での被災者についての調査、車中泊のプレ調査を行いました。

 東日本大震災では多くの人が避難生活を送り、その避難所での生活により健康被害を訴える人が多くいました。また、二次避難を行う際の手段として車中泊避難を選択した人もいました。
 その車中泊避難ではメリットとして、三密回避・ストレス軽減などがあり、デメリットとして、エコノミークラス症候群・熱中症などが挙げられます。

 車中泊のプレ調査では、主に四国、中国地方にて16日間に及ぶ調査を行いました。そのプレ調査の中では、不便に感じることが多くありました。例えば、車内を快適な温度に保つことが困難であること、スマートフォンの充電を確保することが難しいこと、エコノミークラス症候群の危険性などがありました。
 これらは災害時に車中泊避難を行った際の困難と共通する部分がありました。

高速道路上のサービスエリアに泊まる車

車中泊中の車内の様子

 

調査

 プレ調査にて私が経験したことは、他の学生に対しても言えることなのではないかと考え、長岡造形大学の学生66人に対して、Googleフォームによるアンケートを実施しました。
 質問項目としては、車中泊の経験についてとこれまでの防災訓練で記憶に残っていることついて質問を行いました。
 アンケート調査の結果として、回答者の4割に当たる23人が車中泊経験のあると回答し、その全員が車中泊中に不便を感じたと回答しました。
 次に、感じた不便に対して、約半数が改善しようと思ったと回答しました。しかし、実際に改善するように行動したという人は4割という結果になりました。
 この時、不便を改善しなかった理由として「改善できる気がしない」「自分だけの問題だから我慢した」「終わりがあるから我慢した」という意見が得られました。
 これまでに参加したことのある防災訓練について記憶に残っているものとして、体験やイベントのような避難訓練が記憶に残っているという回答を得られた反面、面倒臭い記憶があるという意見が見られました。

 

提案

 車中泊中の不便を改善するといった4割の人は車中泊をするだけで問題解決の力が得られます。しかし、残りの6割の人が車中泊中に感じた不便に対処する力が必要であるため、その6割の人が不便を改善しなかった要因を取り除くために、長期間の車中泊で成功体験を積ませるアクティビティを考えました。
 アクティビティの内容としては、簡単で、工夫する体験ができ、人と協力しながら、楽しく参加することのできる内容とします。
 実際のイベントではチームのメンバと協力して、極寒の車内を道具を使って暖かく寝られる空間にするという内容で行いました。
 イベント後のアンケートで、災害時の車上生活で役に立つ、ホームレスになった時に役に立つという意見があったため、災害などの有事にも役に立てることができる経験とすることができました。

(写真は実際に行ったイベントの様子です)

開始早々の雪

突然の雪に、車のバックドアにブルーシートを被せて対応しました

ダンボールで車内を囲っていきます

車内を飾りつけて楽しさも +αしていきます

ダンボールと布を使って小さなこたつの完成です

結論

 本調査から、車中泊をするだけで4割の人が災害時に生存するための姿勢を身につけることができ、残りの6割の人には、ワークショップとして長期間の車中泊での成功体験を擬似的に体験することで問題に対する対応能力が向上し、災害時にも活かすことができるようになることが明らかになりました。

 今回は車中泊に注目して研究をしたが他にも多くのシチュエーションを考えることができ、より多くの防災ニートに対してアプローチすることができると考えます。

より詳細なデータは、以下をご覧ください。

卒業研究パネルデータ

展示の様子です。