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時の陽だまり

小学校跡地を利用した「過去」「現在」「未来」の記憶と食を共有する場
杉谷望来
学科・領域
建築・環境デザイン学科
コース
建築・インテリアコース
指導教員
与那嶺 仁志
卒業年度
2023年度

プロローグ

富山県魚津市上野方地域。ここは、山と海を一直線に結んだ中央部に位置し、
自然環境の豊かさ、山と海の繋がりを視覚的に感じられる場所である。
さらに、近年少子化によってこの地域にある上野方小学校が廃校となる出来事があった。

淡々と過ごす日常。いつの間にか過ぎていく時間。
本建築ではそんな時間の中にある目に見えない豊かさを解放し、一瞬一瞬の大切さに気付く場を作ることを目的とする。
そのために私は未来の自分自身をつくる「食」と過去の形跡である「記憶」に着目し、この地に建築を計画した。

 

敷地内での計画

記憶と食の両者が空間性と場に密接に関係していることを引き出す設計とする。

~記憶~

当時のまま残されている体育館はRCの骨組みのみを有効利用し、解体された校舎は間取りを活かして空間を再構築する。かつて存在していた場には思い入れや懐かしさがあり、空間は「時間」という奥行きを含む。

~食~

野菜が育つ上で土地性・気候など自然環境が大きく影響している。畑、温室、水耕栽培、屋上栽培の4つのエリアを設け、土との接地面や人と野菜の距離感(制御と放置)に変化を持たせることでより食材自体への理解が深まる。

さらに、「食」における4つの分類「育てる」「販売する」「調理する」「食べる」の場をかつての懐かしい空間があった場所に作る。記憶と食の空間が重なり、互いが持つあたたかさに気づくきっかけを与える。

敷地外との関わり

魚津市は市内で水循環が完結していることが大きな特徴である。山の恵みを受け海に還す流れの中間地点に位置するこの地で、水を引き込み、美しい状態にして還すことで循環の流れに乗る。
さらに建築の屋上緑化での雨水の浄化、使用後の汚水の還元を敷地内に設置した池と共に小さな水循環として可視化し、魚津市全域の大きな水循環の大切さに気づくきっかけを与える。


小学校の懐かしい記憶が日々続く食の営みとともに生き続け、広がる。

時を超え、あたたかさが宿る場所。時の陽だまり。

前館_平面図_断面図
後館_体育館_平面図_立面図