院内学級における美術教育実践の現象学的研究
病気や障害と向き合う子どもたちの美術制作をめぐる探究に並走して
学科・領域
博士(後期)課程 造形理論領域
指導教員
小松 佳代子
卒業年度
2023年度
私は長岡造形大学の博士(後期)課程においてArts-Based Research(ABR)として、自身の絵画、版画分野の美術制作を基盤とし、アーティストであり、美術教育実践者でもあり、研究者であるという立場から、病院に入院する子どもたちの美術教育の研究を行なってきました。
病気や障害と向き合って生きる子どもたちの美術制作は、アーティストによる美術制作と異なるものとして理解されることがありますが、私は本研究において、それらは根本的に共通するものであると考えていきました。私がそのように考えていったのは、私が博士(後期)課程における自身の美術制作のなかで起こっていることに意識を向け、美術制作とは人間にとってどのような営みであるかという問いに向き合っていったためです。私が絵を描く際に変化していくのは作品だけではありません。世界をどのように眼差し、そして素材や画材の性質にどのように応答していくのか、美術制作において変化するのは作者である自分自身でもあります。その点において、アーティストによる美術制作も子どもたちによる美術制作も変わりはありません。
病院で美術制作を行なっていた子どもたちは、病気によって日々、変化する身体をもっています。美術制作は子どもたちにとって、自身の身体や外界との関係を編み直していきました。本研究はそのような子どもたちの美術教育の内実を明らかにしたものです。