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私があなただった時

山田モモ
学科・領域
修士課程 美術・工芸領域
指導教員
遠藤 良太郎
卒業年度
2021年度


私は以前、図書館で借りた本の奥付に貼られている返却期日票に自分が借りた日付以外のスタンプを見た際、同族や自分自身、誰でもないようで誰にでも当てはまる何者かの存在を感じた。
かつてここにいて痕跡を付けた人は、誰と言えない抽象的な他者である。抽象的な他者に同じ場所に立ったり同じものを共有することで親近感を感じ、感情移入する。抽象的な他者とは、私がこの世界に生まれ落ちる前肉体を持たない誰でもなかった時の私ではないか思った。

『私があなただった時』

『あるところ―ヒト型の落雁―』
図書館の本の裏についている返却期日票に、自分より前の日付印が押されていると、仲間を見つけたような気になります。同じ図書館で、多くの本の中から同じ本を手に取り、同じように借りた人がいる。同じ道を通った仲間の背中を感じます。

でも見つけたはずの仲間は、次の瞬間には霞がかかるみたいに遠ざかって消えていくようで、仲間の存在を感じていた日付印は、ただの味気ない日付印でしかなくなってしまいます。

その時の感覚が、落雁を口に入れた時に、ふわりと消える現象と似ていると思いました。

落雁の型は私の立ち姿から輪郭を簡易化した形になっています。