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若年世代の地域行事の参加や地域活動を促す方策に関する研究

江守柚月
学科・領域
建築・環境デザイン学科
コース
環境計画・保存コース
指導教員
福本 塁
卒業年度
2021年度

私の地元では獅子舞の地域行事が行われています。
過去に悲しかった自分の獅子舞の体験から、地域行事に関わる若者たちと地域の人たちの実態を調べました。

背景

 富山県内各地で春期や秋期に獅子舞が開催されており、筆者が生まれ育った高岡市下牧野地区では毎年春期に婚礼等のお祝いに獅子舞が地域行事として開催されている。私は2010年の小学4年時から2017年まで獅子舞における笛の演奏役として参加していた。獅子舞の参加を通じて楽しみながら非日常感を得る、地域の大人たちを始めとする新しい人々と交流することができていた。 しかし、こうした新しい人々との交流には負の側面もあった。2017年の高校3年時に、笛の演奏役の演奏の要となる上級者が欠員し、演奏技術が十分に習熟していない私が最年長となる状況になった。当時、笛の演奏役は私を含め5名となっており、高校3年生が2人、中学3年生が1人、初参加者となる小学3年生が2人の内訳だった。本番で演奏するためには上級者の参加もしくは演奏指導者が必要だが不在のままであった。さらに、高校3年生も一部不在となり、難易度の高い曲の長時間演奏を筆者が担当することとなった。本番では、当然上手く事が進むわけではなく、ミスや演奏の中断が発生した。演舞終了後には獅子舞の仕切り役の担当者より「もっとちゃんと吹いて」と冷遇され、状況を乗り越えようとした姿勢や取り組みを否定された印象を受けた。このことから私は県外進学を機に獅子舞の地域行事に関わることを辞めた。

目的

自身の体験に基づくと、地域行事の参加には「非日常感や世代を超えた交流を楽しめる可能性」がある一方で、「人間関係に起因する参入障壁」となっている視点もあると考えた。人口減少時代において、地域行事を存続させるためには若年世代と地域の接点・接続の維持について実態を把握することが重要だと考えた。そこで本研究では、若年世代の地域との関わりがどのように形成されてきたかについて、富山県高岡市下牧野地区に居住していたことがあり、春期に行われる獅子舞の地域行事に参加していた経験がある人を対象にその実態を把握し、若年世代の地域行事の参加、地域との関わりを促す方策を提案することを目的とする。

結果

下牧野地区にある獅子舞保存会という団体に参加していた10人の方にインタビュー調査を行った。参加者は皆、獅子舞や獅子舞を通じて仲間たちと騒ぐことが好きであった。不安な点として運営をしている地域の大人たちは人手不足により今後も地域行事の獅子舞を続けていけるのかを心配していたが、学生を含む若者たちは大人たちとのコミュニケーションロスに悩んでいたり、厳しい指導で獅子舞を辞めてしまうといった現実があった。他にも、獅子舞保存会の仕組みや80年以上続いていた下牧野の獅子舞の歴史について知ることが出来た。

提案

下牧野地区の獅子舞保存会の問題としてやはり人手不足があげられる。下牧野地区は牧野地区という大きな地区に所属しており牧野地区内では他にも上牧野地区や姫野地区、中曽根地区も獅子舞を開催している。下牧野の獅子舞では開催時期が違うことにより学生が姫野地区、中曽根地区から参加をしていることもあった。そこで、私は「牧野地区獅子舞支援制度」を提案する。これは、開催時期が違う獅子舞団体が協力し、参加することで人手不足の解消につなげていこうという仕組みである。これにより、指導者不足の解消にもつながり下牧野というつながりだけではなく牧野地区という大きな地区同士の人のつながりもできると考える。

感想

当時、高校生だった自分にとってはもう2度と参加したくないとまで思ってしまったつらい過去ですが、インタビュー調査を通してお互いの考えや思いが上手く伝わっていなかっただけだと感じました。人手不足の問題で存続も危ぶまれる地域行事ですが、自然とその地域の一部になるほど馴染んだものを今後もずっと続けていけたらいいなと思います。

卒研