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地方商店街におけるリノベーションを通じた「まちの居場所」の形成

山川莉歩
学科・領域
建築・環境デザイン学科
コース
建築・インテリアコース
指導教員
羽原 康成
卒業年度
2022年度

現在,全国的に空き家が増加しており,各地で空き家活用の取り組みや対策が行われている。特に地方都市における空き家の発生率は著しく増加し,山形市では平成30年度当時での空き家総数は54,200戸であり,過去最大になっている。空き家問題の解決策としてリノベーションが挙げられる。山形市でもリノベーション事業は広がってきており,中心市街地である七日町には水の町屋七日町御殿堰やとんがりビルなど多くの建物がリノベーションされている。これらの建物の多くはカフェやレストランにリノベーションされている。近年日本において飲食,会話のための利用に加えて勉強や読書など,カフェ内での行動が多様化している。この他にもストレス解消,職場周囲での気分転換としてカフェや飲食店が利用される事が多い。このような場所のことをサードプレイスとよぶ。近年生まれている居場所の特徴でもある「住み慣れた地域で安心して住み続ける事ができること,日頃から誰もがいつでも気軽に交流できること」「個人の中だけに閉ざされるものではなく,人と人,人と地域を結びつける」ということをサードプレイスに取り入れれば,地域住民が気軽に利用することが出来る「まちの居場所」となることだろう。
そこで本研究では商店街の中心に「まちの居場所」となるカフェや勉強スペースなどが入った複合型施設を形成する事とする。そして、その場所を中心に商店街店舗同士の関わりが深くなり、商店街主自らの手で空きテナントを埋めていけるようになる事を目的とする。
本研究の対象敷地は山形県山形市七日町商店街とする。山形駅から徒歩20分ほどにある全長約300mの商店街で、集積率・集客力・販売額ともに県内随一の広域型商店街である。最近では大型店の閉店が相次いでおり、平成12年以降商店街内にあった大型店4店舗が閉店し、直近では令和2年に大型百貨店が閉店となった。
 研究にあたって七日町商店街主に向けたアンケート調査を行いました。調査を行った結果、大きく二つのことが七日町商店街の実態として見えてきました。
 一つ目は、商店街全体で新型コロナウイルスの影響を大きく受けているということです。個々の店舗では売り上げが衰退しているところが多く、商店街でも人通りが以前より少なくなっていたりイベント開催頻度が減っていたりなど現在の商店街の雰囲気は以前よりも静かになっていることがわかりました。
 二つ目は、活性化に意欲的であるということです。活性化に関わる問いの回答では多くの方が前向きな回答をしており、また具体的に行ってほしいことの問いにも多くの回答をいただいたことから活性化に向けての意欲は十分にあることがわかりました。しかし、具体的な考えを持っていても、実行に移す機会や組織などが現段階では十分でないことから商店街を盛り上げていくには、きっかけ作りが大切であることが分かりました。
 以上の二つの実態と七日町商店街の空きテナントの現状を踏まえて、サードプレイスとなるまちの居場所と「分散型ホテル」の提案をします。分散型ホテルの特徴でもあるホテルに備わっているレストランやお土産屋の役割を商店街に分散させることで人が流れるようになり、コロナ禍で影響を受けた店舗も売り上げの向上につながります。また、七日町商店街及び周辺の空きテナントをホテルの客室とすることできっかけができ、空きテナントも埋めやすくなります。
 まちの居場所「梅花藻」
 この場所は分散型ホテルのフロントの役割も担っており、地下一階には宿泊者が利用できる銭湯があります。一階に誰でも入りやすいカフェを設置することで多くの人が利用してくれるきっかけとなり、そして、上の階に上がるごとにパブリックな空間からプライベートな空間になるため、自分に合った居場所を見つけやすくなります。建物の形成としては、空き家となり、取り壊されてしまう建物の材をを「まちの居場所」の材として再利用します。建材を減らすことで余裕が生まれ、空き家問題を少しでも減らすことができると考えました。また、廃材を利用した建築というのは現在あまり広まっていないため、このような施設が作られるということだけで話題性が生まれ、七日町商店街の認知度も広まっていくと思われます。
 分散型ホテル「津々堰々」
 客室は基本2〜4人部屋ですが、男女別々のドミトリーも設置しています。商店街近隣や駅前にあるホテルはほとんどがビジネス、観光用のものとなっているため、若い人たちや外国人の方が気軽に宿泊できて、交流もできるようにドミトリーを設置しました。客室のインテリアは、地元の美術大生の作品を使用し、アメニティは商店街で販売されているものを使用します。そうすることで、宿泊者の方がインテリアやアメニティを気に入った場合、その場で購入することが可能になり、商店街の売り上げに貢献することができます。
以上の設計でまちの居場所を中心に、客室、商店街の店舗へと人が広がり活気の溢れる商店街となります。そして、小さい頃私たちの居場所だった商店街が、多くの人の居場所になって幸福になっていくことを願います。 パネル1 パネル2 パネル3 パネル4 パネル5 パネル6 パネル7