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ほとりべ

記憶と語りと海と
古俣 寧々
学科・領域
建築・環境デザイン学科
コース
環境計画・保存コース
指導教員
津村 泰範
卒業年度
2022年度

私が高校生の時、祖父が認知症になった。
話が通じずにいつも怒っている祖父、一人でどこかへ行こうとする祖父、文房具を食べ物と勘違いする祖父。認知症と聞いても当時あまりピンときていなかった私は、自然と祖父との距離を置くようになっていた。
高校3年生の時、祖父が亡くなった。
その時の私といえば長い間、面と向かって顔を合わせていなかったためその死さえもピンと来なかった。しかし、祖父の死から時間が経つにつれてもっと自分にできることがあったのではないかと思うようになっていた。私が祖父の認知症が発覚したときにもっと声をかけて、距離を置かないであげていれば祖父の認知症の進行が少しでも遅れていたのかもしれない。
この体験をきっかけに私に今できることを考察する。

「分散型グループホームの提案」

一般的なグループホームは、通常1棟、多くても3棟ほどの建物からなっている。ここで提案する提案は、日常生活を彩る娯楽施設の他、認知症の進行抑制に効果的な療法を行うことができる施設などを施設内に分散して配置する分散型の町のようなグループホーム。

「懐かしさを感じられる町」

この施設の時代設定は、昭和30年代。
「社会的な懐かしさ」と「時代の連続性」を用い、この施設を訪れた方々全員に懐かしさを感じてもらいながら、生活をしてもらう。
加えて、施設内では「回想法」という近年、医療現場などで注目されている療法を誘発させる仕組みを作る。

回想法:回想法とは、昔を思い出させる写真や、音楽、食べ物などを用い、昔の経験や思い出を語り合う。それをみたり聞いたりした認知症患者のかたが回想をするとともに、それを周りの人が受け入れることで、認知症の高齢者の心理的な安定や生きがいの創造をサポートする方法。

「回想法の空間への落とし込み」

回想法は、自分が懐かしさを感じられるものを見たときに開始される。このことから、施設内の至る所に懐かしさを感じられる物を散らばせ、それを見た人が他の入居者の方と自然に回想法を行うことが出来るようにした。
元々、懐かしいものを見たり聞いたりして「懐かしい」を感じることは脳を刺激し脳の健康を維持し、認知症になるリスクを下げる可能性があることは分かっている。そのため、懐かしさを感じるものを用いた空間構成は認知症患者向けグループホームに非常に向いていると言えるだろう。



昭和時代を意識した施設内理容室と映画館施設内銭湯

施設内の溜まり場

砂山食堂改め趣味室