MENU

丸森地名考

地名で読み解くふるさと、地名で伝えるふるさと
渡辺瑠花
学科・領域
建築・環境デザイン学科
コース
環境計画・保存コース
指導教員
津村 泰範
卒業年度
2022年度

地名っていいな。

特に、小さな地名は面白いものです。
大字(おおあざ)や小字(こあざ)が、小さな地名です。

たとえば、「銅屋場(とうやば)」
銅屋とは、製鉄業に関する言葉で、主に鋳造業を担っていたようです。
銅屋の仕事は、森を切り開き、作物や川などの自然環境に良くない影響を
及ぼしてしまうため、その営業は厳しく取り締まられていたそう。
調査した場所には、既に銅屋の面影はありませんでしたが、
かつての生業の面影を感じさせます。

もうひとつ、「カジュッタ、カジュウタ
海外の地名でしょうか?
いいえ。宮城県の、とある地域にあります。
正確には「柿内田(かきうちた、かきうちだ)」で、
地元の人が訛って発音するために、カジュッタ、と聴こえるのです。
地域の個性を感じます。

実はこれら、地図にない地名です。
地図にないって、どういうこと?とある地区には、およそ400年前、これだけの地名がありました。
しかし、現在住所として正式に残っている、
ちゃんと地図に残っているのは、たった3割ほど。

つまりは、地図から消えてしまった地名、
または、口頭でしか使われない地名。
それが、地図にない地名です。消滅地名だとか、通称地名と呼ばれます。
(住所などに用いられているものは、行政地名と呼びます。)
住所に使われず、地図に載らなくても、れっきとした地名なのです。

先ほどふたつ、例に出しました。
地名を辿ると、土地のようすや、地域のあれこれを知れそうです。

2022年 春ごろ。
ふるさとのことを知りたい、研究したい・・・と考えていた私。
そんな想いと、地名の研究が結びついたのです!

●●わたしの地元●●

小斎(こさい)は
東北は宮城県 伊具郡 丸森町(いぐぐん まるもりまち)にあります。一級河川・阿武隈川(あぶくまがわ)が流れ、
平野部と山林部は3:7ぐらい。
少ない平地のほとんどが田んぼで、傾斜地には畑や果樹園。
温暖な気候と肥沃な土質から、美味しい米どころとして有名です。
名将・伊達政宗の初陣の地ともされています。

●●どんな研究?●●

古文書や聞き取りなどの現地調査をし、
約半年間、小斎地区の地名を集めました。

小斎には、寛永(1624~1644)の頃の
古地名が49個、小字として残っていました。
小字はぜんぶで66個あるので、全体の7割が古い地名です!

狭い地域ながら、通称地名は
167個収集できました。
通称地名は、主要な道路や河川、墓地や神社、
小学校などの公共施設の付近に密集傾向がありました。

集めた地名の一部を
さらに詳細に調査する「地名考察」を行います。
古文書や古地図と照らし合わせたり、
地形を見てみたり、ひたすら歩いてみたり、
言葉の意味や、地域の言い伝えを調べてみたり・・・

地域を知りたくて、けっこうなんだかいろいろやりました。

▼▼地名考の詳細は、論文の第2章にございます。▼▼
渡辺瑠花の卒業論文

●●地名と地域を発信!●●

地名考察を通して、地域の解像度がグンと高まりました。
好きな地名なんかもできました。
(推し地名は日向(ひゅうが、ひなた)です!
 太陽のぬくもりを感じます。)

地名と地域を、なにかしら表現したい!
地名で地域をオモシロがれるのでは、
ないだろうか?
そんな想いが芽生え、思いついたのが「地名表現」です。

そして、この度、「地名表活俱楽部」を結成し、
地名と地域の表現活動に取り組み始めました。
制作物の一部をご紹介します!

「ふるさと小斎の地名秘聞」

絵地図は親しみやすさと、
一目で多くの情報を伝えられる点が魅力です。
「米どころの黄金色」「豊かな自然の深緑」「温暖な気候の橙」
小斎の暮らしや自然をイメージした色合いとし、
裏面には、地名にまつわるエピソードを
まとめてあります。

「地名点取り占い」

点取り占いは、駄菓子屋で見かけた方もいるでしょう。
独特のゆるい雰囲気は抜群の愛らしさ。
残念ながら本家・点取り占いは、
数年前に生産終了となってしまいました。

  左には小斎の地名。
  右のテキストは、
  小斎の言い伝えを基に
  作成しています。

持ち歩ける地名、いかがですか?

▼▼言い伝えの一部はこちら▼▼
小斎地区 地域学習資料 一覧

 

地名を通して、地域が見えてくる・・・
地名は案外、面白い。地域も案外、面白い。
身の周りの地名、少しだけ気にかけてみてください。

文字はカンタンだけど、意外なトンデモ逸話があるかも?
その場所にしかない、地名にしかないコトバが使われているかも?
もう少しで、消えてしまう地名が、あるかも・・・

もっと地名と地域のことが知りたい!
残して、発信したい!
この研究はまだまだ終わりません。

 

地名表現活動に
今後もますます
励んでまいります!

最後に卒展のパネルとようすを。

研究つづくよ どこまでも