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艶ビル研究

婀娜っぽいビルをアーカイブする
北川琳香
学科・領域
建築・環境デザイン学科
コース
環境計画・保存コース
指導教員
津村 泰範
卒業年度
2023年度

古いビルには、色気や艶めかしさを感じる。
中心市街地の通りに、みちみちに並ぶ古いビル達は主に1960-70年頃に建てられたものである。
この時代は、機能主義のモダニズム建築が特徴的だが、同じ時代に建てられた古いビル達は、
典型的なモダニズムからちょっぴり外れている。
私はそんな洗練された中に潜む不器用な部分を『婀娜っぽい』と形容し、
特に艶めかしさを感じるビルを『艶ビル』と命名した。
この研究は、艶ビルの愛でるべきポイントを示し、多くの人と共有できるような表現を目指す。

●研究対象●

中心市街地活性化基本計画を策定している、長岡市と十日町市。
大学生活を送るうえで古いビルが多いと感じた栃尾地区、三条市、見附市、新発田市に足を運んだ。

●艶ビルの変遷●


艶ビルの外観を構成する建材は数多く存在するが、
その中でも特に艶ビルの表情に深みを与える、外壁タイルサッシガラスブロックに着目した。
角丸の窓や、艶々の色彩豊かな釉薬タイルに目を奪われる。
まちを歩くとき、建材に目を向けて歩いてみると、その魅力的な建材たちに魅了されること間違いなし!

●無名の建築家●


艶ビルの変遷と一般的な様式の変遷を照らし合わせると、少しのずれがある。
彼らの建築デザインや建材の解釈には、同時代の建築家の感覚との齟齬があったのではないだろうか。
このように、寺社や自然資源にはない
建築家の思いまで感じ取ることができるのは、20世紀の建築ならではである。

●艶ビル表現●

これらの表現では、論文を読まずとも興味を持ってもらえるものとした。
艶ビル札と艶ビルカタログは、各地で見つけた艶ビルと残してほしい建材を掲載している。
艶ビル模型は、展示を見に来てくれた人と艶ビルの魅力を共有するツールとなる。

●文化財としての『建物』●

艶ビルは『建築』ではなく、『建物』である。
『建築』は有名建築家が建てた価値の高いもので、『建物』は機能的な箱と捉えられている。
艶ビルの魅力を知ることがなければビルの立場は変化しない。
だからこそ、このような表現によって保存継承の契機を生み出したのである。

誰かが強い愛情を持ち続ける建物は、大切に可愛がられていくことだろう。

 

展示の様子

卒業展示のパネル