ツクバケンキュウガクエントシ1.0+1.0
約半世紀前に計画がなされた、筑波研究学園都市を1.0と捉え、失敗した街とも言われるこの街の次の半世紀+1.0を計画する。その中心として、「人流・エネルギー・文化」の3つの始点としての機能を中心市街地「センター地区」に展開する施設「Tsukuba Corner Spot」を計画・設計。これまでに積み上げたポテンシャルと新たな技術を結びつけ、次の50年を想像する。
ツクバケンキュウガクエントシ1.0+1.0
中間発表
筑波研究学園都市は、人口約25万人の現在のつくば市に位置し、東京駅から60km、つくばエクスプレスで北千住まで30分の立地です。
この都市は、半世紀前、東京の一極集中の解決、科学技術の振興を目的に計画されましたが、計画人口が大きく減ったり、当初はコンパクトだったマスタープランも、コンパクトとは呼べないものになり、失敗した都市と言えます。
このように問題点は最初からありましたが、現在の問題点として、片側三車線の渋滞と、多くの温室効果ガスの排出、車社会前提による各施設の物理的、心理的距離の遠さ、駅前空洞化、大量の公務員宿舎の廃止、TXによるベッドタウン化の進行。などがあげられます。
ただ多くのポテンシャルもあり、敷地を囲う50m道路に左折レーン、48kmに及ぶ遊歩道、約7.6kmに及ぶ共同溝、削減しても残る団地、サブセンター、みんなが集まれる公共施設、いくつもの研究所や筑波大学、多くの外国人などがあげられます。
ここまでがこれまでの半世紀のこの都市、1.0となり これをベースに機能の追加、都市計画、意匠設計を通し、これからの半世紀+1.0を形成します。
まずは水素です。クリーンエネルギーの水素を、Jaxa などか開発中のSSPSなどの再エネで生成し、供給します。この水素は共同溝で水素自動車やLRT、各家庭に供給されます。
LRTとシェアサイクルは、施設間の距離感を縮め、住民の中心地利用の増加、学生の中心地への移住、利用を可能にします。 私の今の計画ではLRTは筑波大と駅、住居地域を2路線で繋ぎ、その間に遊歩道を使いシェアサイクルを配置します。
このようにポテンシャルを生かした計画をしています。
最後にこの計画の核になる新サブセンターです。 サブセンターは商店街のようなもので、団地とともに建設されましたが、団地の廃止、跡地へのマンション建設とともに衰退しています。それとともに公共施設の利用が減り、中心市街地の空洞化が進んでいます。
そこで、マンション住人、高齢社会における住民サービスの質の低下により増えると予想される郊外からの高齢世代、学生との関わりを団地+1.0とし、人流を生み出す新サブセンターを計画します。
敷地には、遊歩道を中心に、公共施設、団地関連、教育施設、商業施設が配置されており、団地付近の公共施設を中心に新サブセンターを計画し、+1.0団地から公園へと足を伸ばし、そこから駅前中心地への人流を生み出します。このような新サブセンターを対象敷地に複数個計画します。
期末発表
名前の通り学園都市のこの街は、国によって計画がなされ、50年ほど前に建設が始まりました。
東京からの研究者など、多くの国家公務員が移住し、周辺都市と新交通システムで結ばれることで、現在のコンパクトシティに近い新都市を造る計画でしたが、新交通の計画が頓挫し、移住が計画通りにいかず陸の孤島、失敗した街と言われるようになりました。
しかし、陸の孤島がゆえに、公務員宿舎からの人流により内需が高まり、万博の効果も相まって、独自の発展を遂げました。
ただ、現在では、渋滞による温暖化の進行の他、公務員宿舎の廃止やベッドタウン化による人流の郊外化が大きな問題となり、センター地区の人流は以前に比べると内需を失い空洞化が進んでいます。
ですが、遊歩道や都市を囲む50m道路、上下水道管やガス管、電線、蒸気管、冷水間などが入った共同溝、約1.6万人の学生を有する筑波大学など、50年間に多くのポテンシャルが培われてきました。
これまでの学園都市を1.0とし、新たな技術、拠点を用いて次の50年+1.0を考えるのがこの計画です。
その中核を担うのが、TSUKUBA CORNER SPOT通称TCSです。
1.0と+1.0が交わるこの施設は、コンクリートと鉄骨のグリッドが大きな起伏の人工地盤に入り組む設計で、ここを拠点に三つの始点としての役目を果たします。
まずはエネルギーの始点です。TCS内で宇宙太陽光発電による電力により、川から取水した水を電気分解し水素を供給します。生成した水素は、共同溝を通り、学園都市内の電気となり、ガスとなり、ガソリンとなります。
次に文化の始点です。土着の文化に馴染めなかった新住民は、筑波大学を中心に、芸術や学術という文化を50年の間に育んできました。TCSは、その文化をセンター地区に展開する中心拠点となります。
最後に最も重要なのが人流の始点です。公務員宿舎のさ削減などにより消えてしまった人流を回復する事ができれば、センター地区の復興に繋がります。
3つの始点は、図書館・学生寮・美術館・移住高齢者居住施設のこれらの4つの機能により役目を果たします。
まずは、図書館です。図書館は、知識のinputとoutputの場です。しゃべる事ができる図書館として、多くの学生や研究者が意見を深め合い、新たなアイディアと共にスタートアップが発生し、学園都市に還元されることを願います。
美術館は、筑波大学美術学群のoutoutの場として機能します。彼らには作品を見せる場所がセンター内になく、学園都市住民は作品に触れれう機会はありませんでした。互いに文化としての芸術に触れ合います。
学園都市郊外高齢者の居住施設は、将来的に居住困難地区とされてしまった高齢者の居住地として、学生と高齢者の新たな関係性を育まれることに期待し、将来的に設置できるスペースを設けました。
そして筑波大学学生寮です。シンプルに構成されたユニットは、学生一人ひとりのライフスタイルに容易に馴染ませる事ができます。
さらに、そのほとんどが大学周辺に住んでいる筑波大生がセンター地区に住むことにより、かつての公務員宿舎の代わりとなり、人流を復活させます。TCSを中心に周辺の廃止宿舎を学生寮へと転用されれば、より多くの学生がセンター地区へ居住し、安定した人流をセンター地区内に供給する事が可能になります。
しかし、TCSまでの交通手段がなければ、人流の視点としての機能は果たせません。そこでTSUKUBA CiTY TRAINというLRTを計画します。共同溝からの水素供給で動くこのLRTは、学園都市の50m道路を中心に2路線合計20駅を結び、同時に駅間にシェアサイクルを配置し、駅までの移動を補完します。この2つの交通手段により、学園都市全域からTCSに人流を供給することが可能になります。
TCS内の4つの機能と新たな交通手段が一つとなり、半永続的に一定の人数が集う筑波大生を中心にセンター地区の3つ始点としての役割を果たすことで、空洞化が発生した地区に人流をはぐくみ、新たな都市の風景を形成します。
LRTの沿線上には補完すべき施設がある事が見出せた。大学院では大小様々なその施設について研究を行っていきたいと考えています。
これまでに積み上げたポテンシャルと新たな技術を結びつけ、次の50年を想像する。
ツクバケンキュウガクエントシ1.0+1.0
期末 パネル