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十日町市における企業による地域貢献の実態と効果に関する研究

村上力斗
学科・領域
建築・環境デザイン学科
コース
環境計画・保存コース
指導教員
福本 塁
卒業年度
2020年度

【研究動機】

私は大阪から長岡造形大学に来ました。大学生活を通して、知り合った長岡の人によく「なんでなにもない長岡にきたの?」と尋ねられることがあり、「なんでなにもない」って言うのか、なぜ長岡の人が自信を持って長岡の魅力を話さないのか、このことに違和感を持ちました。そして、それは若者が長岡に愛着を持ちにくいことを意味し、若者の流出問題にもつながり、地域の持続性を阻害してしまっているのでは と考え、解決に取り組むアプローチとして「社会起業」に興味を持ち、自身の取り組みを始めました。

 

【研究の目的】

自分には知識が足りなかったのでとにかく様々な人にこの話を聞いて回っていました。すると、ある時、十日町市のクラフトビール会社の紹介を受け、イベントに参加させてもらうと地元住民たちが商品である十日町のクラフトビールを来訪者に対し自慢げに話していたことから、ビールでも地域に魅力を感じ愛着を持つきっかけになるのか。と実感し、他にも様々な企業がいるため、企業独自の若者流出問題に対する解決方法としての地域に魅力を感じ愛着を持つ商品や実践方法をもっているのではないかと感じました。そして、企業によるこうした地域貢献の実態を調査すれば、問題の解決につながる提案ができると考え、卒業研究をはじめました。

 

【仮説の設定】

事前調査では企業によって地域貢献のパターンが異なる可能性を発見することができ、特に移住者の起業パターンがとても地域の住民に受け入れられている可能性を感じました。自分自身も移住をきっかけに地域貢献や社会起業に興味を持ったこともあり、研究仮説を移住者の起業が地方企業の地域貢献に関して影響をもたらすのではないか?と設定しました。設定理由としては、住民が気づきにくい地域の魅力を、移住者なら資源として捉えやすいと考えたからです。

 

【データ収集】

データの収集のため、こちらに示した質問項目の半構造化インタビュー調査を行いました。コロナ禍でしたので、突然のアポイントは避け、11回主旨や思いを伝え、お話を伺えそうな方を紹介頂くスノーボールサンプリングで30社の経営者に対して実施しました。

【結果】

起業者の出身地の割合は十日町市出身者とUターンの割合が多く、移住者も3割ほど確認できました。移住者の影響としては地元住民や経営者から「移住者に地域の魅力を教えられた」といった証言を得ました。Uターン起業の方は「外に出て十日町の魅力に気づいた」と語っていました。次に、十日町市の「魅力」と「問題点」を尋ねました。起業者が感じる十日町市の魅力では、「大地の芸術祭」が多く、問題点では、人口減少が多く、その要因として「雇用のなさ」が多くあげられていました。

 

【考察】

本研究で設定した仮説の検証を行います。移住者など、他県の暮らしを経た人が、十日町市の魅力に気づき、資源として捉え、地域をPRできる 製品が 作れていたことから、地域貢献に良い影響を及ぼしていると考えられました。このことから、設定した仮説は支持されたと判断します。

【結論・解決方法】

研究の成果に基づき、「企業が『魅力のある雇用の発信を促す活動』をいかに実践するか?」が地方の若者流出問題の解決につながると考えました。では「魅力のある雇用の発信とは何か?」それは、若者が地域を離れる時期までに自分のやりたいことが地元でもできるんだという地域の可能性を企業が伝え、機会を作ることだと考えます。

 

【提案】

これまでの研究成果に基づき、「社会起業」の事業を提案しました。私は自身が居住する長岡市における社会起業をしたいという思いがあり、「十日町市の妻有ビール」でビール製造の業務を経験し、一昨年の9月から長岡駅前の飲食店でアルバイトを継続している特徴を持っています。

これらの特徴を踏まえて次のような提案を行いました。提案及び社会実装長岡市で社会起業をするにあたり筆者のできることを検討しました。冒頭の十日町市でのイベントの経験から、「自分も移住者としてあのような製品や場づくりに携わりたい」と考えました。製造する立場と販売する立場を体験した経緯を踏まえ、長岡市の飲食店で「料理と雰囲気に合わせたオリジナルのクラフトビール」があれば、自身が提示した「若者が自身の居住地域の魅力に愛着を感じ、表現し、他者に伝えられる魅力の一つ」になるのではないかと考えました。その具体的な事業として、「飲食店オリジナルビール」を企画し、「いつもより、ちょっとだけ粋な時間を長岡で過ごしてほしい」という思いから「長岡小粋IPA」と 名付け製造・販売・社会実装を行いました。アルバイト先のオーナーさんも招き、妻有ビール醸造所にて製造を行い、202011月に完成しました。

 

【クラフトビール「長岡小粋IPA」の社会実装】

アルバイト先と妻有ビール株式会社協力のもと、アルバイト先の5周年記念品としてお披露目して、実際に来店者に楽しんで頂く機会を創造しました。また、アルバイト先以外の飲食店への導入が決まるなど、少しずつ、自分が造り出した魅力が他者や飲食店へ波及していることを実感しています。

 

私は社会起業に興味をもち、研究を通して、企業による地域貢献の可能性を見出すことを試みてきました。また多くの関係者による多大な支援を受けながら、自身の興味・関心に基づいた企画の提案・社会実装を行うことができました。本研究の成果と自身の取り組みの経験を基に長岡市で将来「魅力のある雇用を生み出す社会起業」を行いたいと考えています。